次世代の太陽光発電として注目されている「ペロブスカイト太陽電池」は、前回も紹介したように日本生まれで、現在は日本の太陽光発電メーカーも研究開発が盛んに行われています。
たとえば、東芝はいろいろな場所で使える薄いフィルム状のペロブスカイト太陽電池を、パナソニックは高効率・高耐久性のガラス基板の高効率と高耐久性のガラス基板を主に研究開発しています。
ここで、企業のペロブスカイト太陽電池・PSCの最新研究を紹介してみましょう。
各企業におけるのペロブスカイト太陽電池の最新研究
環境保護として需要が見込まれているる再生可能エネルギーは、2018年夏に閣議決定された政府の新しいエネルギー基本計画は、2030年の主力電源の一つとして太陽光発電が定められているほど、実用化の期待が高まっています。
パナソニック
パナソニックと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、今年2020年1月、大きさ30cm角・開口面積802cm2・厚さ2mmという小さなペロブスカイト太陽電池モジュールで、世界最高という変換効率16.09%を達成しました。
これによって、これまで設置が難しい場所で高効率太陽光発電を低コストで実現可能になるかもしれません。
これまでペロブスカイト太陽電池で課題だったのが、どうやって発電効率を向上しながら大型化するかという問題でした。
小さいセルでは結晶シリコンと同じような高効率でも、大型化になると変換効率が低下するという現象があったからです。
今回まず開発したのは、塗布液組成の改善です。
ペロブスカイト結晶の安定化を目指し、高変換効率化が可能な塗布液を開発、さらに、塗布液濃度・塗布量を高精度化する「インクジェット製造システム制御技術」を開発しました。
塗布液の濃度を一定の範囲で調製し、塗布量と速度を制御することで、大面積モジュールにおける高い変換効率化を実現しました。
パナソニックとNEDOはこれから、ペロブスカイト太陽電池モジュールの低コスト化・軽量化でこれまで設置・適用できなかった市場の拡大を目指します。
ペロブスカイト層の材料を開発し、従来の太陽電池モジュールと同じような高効率化に向け、モジュール生産コストを15円/Wとすることを目指すそうです。
東芝
軽い・曲がるPV(次世代太陽電池)は、これまで設置ができなかった場所に設置することができるのがメリットですが、実用化には高変換効率と低コストの両面をクリアする必要があり、PSCはこれを可能にする技術とされています。
最近の研究ではPSCの変換効率が24%以上を達成したとされ、変換効率が10年で6倍にアップしたPSCへの期待は非常に高くなっています。
東芝ではこれまでにも、色素増感太陽電池・有機薄膜太陽電池などの軽量でフレキシブルなPVの開発をしていきました。
自家消費と分散電源が基本となる未来のPV市場では、軽量でフレキシブルなモジュールが最適であるということから、現在東芝が開発に力を入れているのがPSCで、フィルム素材を使用して軽量でフレキシブルのモジュールを開発することができます。
東芝は2014年からPSCを開発をしていて、2015年にはNEDOのプロジェクトに加わるなど、この分野の開発に力を入れています。
そして、2018年にはフィルム基板を使ってPSCで世界最大になる703c㎡のモジュール開発に成功して、この面積で世界最高になる変換効率11.7%を達成しています。
発電層のもとになるインク組成に工夫を加え、基板上の組織の反応を制御する等の最適化をして、大面積の膜厚の均一性と結晶膜質均質性を向上することに成功、面内膜厚分布±7%、材料使用効率90%以上という数字を実現しました。
次世代の太陽光発電に世界が注目
ペロブスカイト太陽電池・PSCの日本企業の最近の開発についてでした。
低コストで高変換効率、さらに軽くて曲がる素材など、まさに次世代の太陽光発電になりそうですね。
ただし、課題もまだあるので、さらに研究開発が必要になるでしょう。